Substance Painterの紹介

ちょろっと呟いてみたら思いの外反響があったので、これから数回、短期集中的にSubstance Painterの使い方なんかを書いていきたいと思います。

ただまあ、お分かりいただけてるとは思いますが私は絵心のないプログラマですので、アート寄りな話はほとんどできません。

これはこういう機能、こういう操作をすればこれが出来る、といった感じの記事がメインになると思います。

こうしたらより綺麗になる、とか、アーティストならこうした方が思い通りに描けるといった情報は発信できませんが、この記事を読んだ方がそういう情報を発信していただければ幸いです。

さて、今回は第1回ということでまずは Substance Painter (以下 SP) とは何をするアプリなのかを紹介したいと思います。

まずは購入方法。

購入は単品での購入と、Substance Designer (以下 SD) + Bitmap2Material (以下 B2M) を含めたセット販売の2種類が存在します。

購入場所は販売を行っている Allegorithmic から直接購入する方法と日本代理店のボーンデジタルさんから購入する方法、たまに安売りしている Steam で購入する方法があります。

オススメはどれかと言われれば、Allegorithmic のサイトから Substance Live というセット販売を購入することです。

https://www.allegorithmic.com/products/substance-live

SP は単体でも十分使える機能を有していますが、より深く使おうと考えると SD や B2M が必要になってきます。

業務の上で、SD や B2M を弄る人と SP を弄る人がきっかりと分かれているなら単体でもいいかと思いますが、個人で勉強したいのであれば Indie 版の Substance Live が圧倒的にお得です。

一括購入が299ドル、月額利用なら約20ドルで、16ヶ月利用すると永久ライセンスが付与されます。

Indie 版は機能制限されていませんが、商用で利用する場合には会社、もしくは個人の年間収益が10万ドル未満であることが条件となります。

アプリのバージョンアップですが、マイナーバージョンアップには無料で対応されることになっています。

さすがにメジャーアップデートは有料になるっぽいです。

ただまあ、月額利用時にメジャーアップデートが来たらどうなるのか?というのはさっぱりわかりませんが。

すでにSteamで Substance Indie Pack を購入してしまっている人は Allegorithmic のサイトでアカウントを作成し、それとSteamアカウントを関連付ければ Substance Live を半額で購入することも可能なようです。

私が Indie Pack を購入した際には SD のバージョンが4だったので、SD5 にするには追加料金が必要なんですがね。

Substance Live をおすすめする理由は金銭的な問題より、毎月無料でDL出来るマンスリー・ドロップというものがあるからです。

ボーンデジタルさんが言うにはこれが結構使えるものらしく、特にフィルタ類は持っていて損がないシロモノらしいです。

というわけで購入方法でした。

なんか宣伝っぽく見えますが、Allegorithmic の手先ではありません。SD5 を手に入れるにも料金が必要な一般人です。いや、マジで。

では次にそれぞれのアプリの特徴を簡単に説明しましょう。

Substance Live で手に入るアプリは SP、SD、B2Mの3種類で、どれもPBR向けのテクスチャを作成するためのアプリです。

まずはB2Mです。こいつは写真素材からPBR用のテクスチャを作成するアプリです。

写真からテクスチャを作成するのは昔から行われていたことですが、PBRが基本になっている現在では単純に写真をテクスチャとして利用するわけにはいかなくなりました。

昔も加工はしてましたが、基本は手で修正してゲームシーンに馴染むようにしていたのではないかと思います。

現在は様々な撮影機器を利用し、色を合わせたりライティング情報を消したりと、手作業で行うのは厳しい状況になっています。

最近ではカンファレンスで撮影方法や機器の説明、加工の方法も紹介されてはいますし、個人や中小企業でも可能なレベルのものもあります。

とはいえ、ドラゴンの皮膚のマテリアルがほしいから爬虫類を撮影するとか、リアルなオープンワールドを作るためにニュージーランドに行くとかはさすがに難しいですし、個人レベルだと機器を揃えるのにもそれなりの覚悟が必要な金額になります。

B2Mを使えばそれらの手間を省き、それなりの品質のPBRテクスチャを写真から作成することが可能です。

また、テクスチャのタイリングも作成できるので、個人レベルであればこれで十分な結果を得られるでしょう。

ネットで落としてきたフリー素材を実際に調整してみたものが以下になります。

sp001.jpg 

PBRレンダラによってリアルタイムに調整ができるのもこのツールの強みでしょう。

次にSDです。

こちらは起動してみればわかるかと思いますが、UE4のマテリアルエディタに似たノードベースのマテリアル作成ツールです。

このツールを単体で使用した場合、やはりエクスポートされるのはPBR用のテクスチャです。

パラメータによってマテリアルを変化させることが可能で、その結果をテクスチャとしてエクスポート出来ます。

下の画像はSD4のものです。SD5は持ってないので不明。でも欲しい。

sp002.jpg

例えば、ノイズテクスチャと組み合わせて ”ペイントされた金属だが、ペイントが一部剥がれていてそのまた一部が錆び付いている” というシチュエーションのテクスチャを作成することが可能です。

ノイズテクスチャの強度をパラメータで変化させることによって、完全にペイントされたきれいな金属、一部ペイントが剥がれてきている金属、ペイントがほぼ剥がれていてサビだらけの金属といった状態を1つのマテリアルで共存させることが出来るというわけです。

このような処理はUE4のマテリアルエディタでも作成は可能ですが、UE4のマテリアルとの違いはテクスチャとしてまとめられるという点です。

この点は利点もありますが欠点もあります。

利点としては、複雑な計算をオフラインで処理できる点です。テクスチャサンプリングの回数も減りますし、ランタイムコストは下がります。

欠点はテクスチャ解像度に品質が依存するという点があります。

ディテールマッピングのような実際のテクスチャ解像度以上の解像感が必要な場合には加工後のテクスチャ解像度をかなり高める必要があります。

解像度を高くするとランタイムコストは上がりますし、リソース容量も増大してしまいます。

SDが最も得意としているのは特定材質のマテリアルを作成することです。

鉄、アルミ、布、肌などを単体で作成するのに向いています。

ゲームキャラクタを作成する場合、そのキャラの肌、着ている服、装備している剣の金属、革手袋などの材質が必要になりますが、これらを1つのマテリアルにまとめようとするとSDではマスクテクスチャが必要になります。

それらの特定の材質にIDを割り振り、IDマップを利用することで汎用マテリアルを作成することは可能です。

しかし、IDマップはSD内で加工できませんので外部アプリを利用することになりますし、その加工による変化をリアルタイムで確認するのが難しくなります。

その問題を解決するのがSPです。SPは特定のモデルに対してマテリアルを塗っていく事が可能なアプリです。

感覚としては、プラモデルに着色するのに似ています。

ここは赤、ここは青、というのと同じくらい(やり直しが簡単なのでそれ以上に)簡単に、ここは金属、ここは岩と塗り分けていくことが可能になります。

面白いのは、ここで塗り分ける各種マテリアルをSDで作成が出来るという点です。

もちろん、SD上で設定したパラメータも変更することができます。

下の画像はSP標準のマテリアルのみで作成しました。これくらいは簡単に作成できます。

sp003.jpg

個人的にこのアプリの利点は、アーティストがアーティストらしい作業ができる、という点ではないかと思っています。

PBRの台頭によってテクスチャ作成時には物理特性を常に考慮しなければならなくなってきました。

金属はこう、布はこう、と数値が決められてきてしまっており、アーティストの頭の中のイメージが数値化されてきています。

体系化されたことによって誰でも一定品質のテクスチャを作成することが出来るようになりましたが、これがつまらないと考える方もいるでしょう。

誰が描いても一緒なら自分じゃなくてもいいじゃん、という意見は、実は全くその通りなのです。

では、アーティストのアーティスティックな感性は必要なくなるのか?というと、それはまた違うと思います。

アーティスティックな感性とはどういうものか?と問われると、これだと絞ることは出来ませんが、AllegorithmicのPBRガイドにもありますし、以前のセミナーでも紹介しましたが、物体や材質のストーリーを考える、というのが1つではないでしょうか?

この物体は以前はこうだったが今は経年劣化してこうなった、この部分は他の物体と接触しやすいために傷が多くて…といったストーリーを考え、これを実際の映像に反映させる能力はアーティストに一日の長があるでしょう。

その感性をわかりやすく反映させることが出来るアプリ、それがSPだと考えています。

最後に、これらのアプリを利用したワークフローを考えます。

基本的な作業の流れは、B2M→SD→SPという流れになると思います。

作業はB2MとSDがテクニカルアーティスト、SPが特定オブジェクトの担当アーティストになるんじゃないかと思います。

どうでもいい、とまでは言いませんが、それほど重要でないオブジェクト類はB2MやSDから直接エクスポートしたテクスチャをそのまま貼り付けるだけになるかと思います。

さすがに全てをSPで細かく調整はコスト的に厳しいでしょう。

しかし、主要キャラクターや重要オブジェクトなどのユーザの目に止まりやすいものはSPで細かい調整を行うのがよいでしょう。

常にこれらのアプリを通してテクスチャを作成しておくと、最後の最後で容量が厳しい!とか速度が!とかいった場合に解像度を下げて対応することも可能になるので便利です。

今後、これらのアプリが一般化するかどうかは不明ですが、知っておいて損はないでしょう。

そして出来れば日本語情報プリーズ!MODOもそうだけど情報足りないよ!

いや、MODOは仕方ない気がするけど。MayaLTで十分って言われれば否定できない…

というわけで今回は文章のみで紹介しました。

次回からちゃんと操作方法とか塗り方とか紹介していきます。はい。