信楽焼マテリアルを作成し終えて その2

というわけで第2回目です。

何回続くかわからないのですが、解説書きながらけっこう修正かけてたりするので時間かかるかも。

前回までで基本色部分を解説してきましたが、今回は装飾として作成した部分の解説を行っていきます。

まずは灰から。

信楽焼には灰かぶりという物があるらしく、当初は普通に黒っぽい灰を軽いノイズとして追加していました。

しかし、見れば見るほど失敗かなと思いました。

こんな感じで灰がくっついてる陶器は見た記憶がありませんし、理屈上はありうるのかもしれませんが世に出ないような気がするなぁ、と。

で、もう少し調べてみると、灰かぶりは焦げの一種で、焦げは釜の中の灰が溜まっている部分に置かれた陶器の下の部分が焦げて灰が付着した状態らしいということがわかりました。写真を見るとかなり黒く煤けるようでしたので、こんな感じに変更してみました。

sd084.jpg

下の部分にかぶるようにするため、上下グラデーションをレベルで調整し、ワープで歪ませました。

これに乗算で [Dirt 5] をブレンドしますが、このノイズはトランスフォームで縮小し、かなり細かいノイズに変更しています。

この状態でレベルをかけたのですが、黒い部分が点在する形になって焦げっぽくなくなってしまいました。

そこで、トランスフォーム直後のレベルでグレースケールを反転させています。

実際の焦げの写真を見ても、焦げてる部分が大部分で少しだけ素地が見えているという感じでしたので、こちらのほうがいいかと思いました。

また、灰かぶりは高さとラフネスにも影響を与えています。

高さについてはうっすら程度で、かなり近づいてライティングを調整すればわかるかも、くらいです。

強くするのはなんか違うような印象がありました。

ラフネスはブレンドでかなり粗くなるようにしています。焦げの強い部分は最大で220になります。

で、結果はこんな感じ。

sd085.jpg

左が Ash Level 0.0で右が1.0です。一応焦げっぽくはなった…かな?

なお、修正に合わせて Ash Height というパラメータも追加しました。その名の通り、灰かぶりの高さですね。

あとは Ash Color も追加しましたが、こちらは変更しないほうがいいと思いました。

次は長石です。

長石は鉱物の一種で、信楽焼では焼成時に溶けて白い斑点のようなものをいくつも作ります。

小さなものから比較的大きなものまであるようですが、今回は少し大きめに作ったつもりです。

ノイズの選定には少し苦労しました。

ある程度の大きな粒でほしいけど、くっつきすぎていてはダメなので、色々調べて選んでいった結果、[Gaussian Spots 1] に決めました。

[Gauss Spots 2] はちょっと細かすぎました。

ノイズを一旦アップスケールし、レベルでスポットの数が減るように調整、これをブレンドアルファとして利用してブレンドしているだけです。

sd086.jpg

これ自体は実に単純ですが、もう少し工夫したくなって少しだけ別の調整を入れています。

長石が溶ける際に部分的にはじけたりすることもあるようです。多分、不純物とかですかね?

弾けた部分は黒くなって穴が空いたようになるようです。これも幾つかの写真で確認できました。

ですので、これを実装してみたくなったので実装しました。

sd087.jpg

穴が空く場所を選定するため、長石のブレンドアルファを軽くブラーしてからレベルで調整しました。

これだけだとほぼ真ん中に必ず穴が空いてしまうので、それを防ぐためにかなり薄くワープを適用しました。

これを黒色とのブレンドアルファとして使用します。

なお、下にある元の長石と穴の色をブレンドしている部分は高さとラフネスのためのものです。

穴のあり/なしを比較するとこんな感じ。

sd088.jpg

なくても良かったかもなぁ…

最後は火色と抜けです。

焼成中に炎が当たるとその部分はほのかに赤くなるそうです。人肌ぐらいが最も良いらしいのですが、写真で見るものはけっこうな赤で人肌っぽくはないですね。

そして、全体的に火が当たっているのに、一部で火が当たりにくかったりするとその部分が白くなります。これを抜けというのだそうです。

まずは火色の色そのものの作り方ですが、これは Base Target Color パラメータで指定された単一カラーを [HSL] ノードで調整しています。

Base Target Color を赤系統(赤や茶色)にしておけば、デフォルト設定で十分火色っぽくなってくれているはずです。

ただ、赤系統から離れてしまう場合は気をつけましょう。

その場合は [HSL] ノードのパラメータもエクスポーズしているのでそちらで調整しましょう。

火色の形状は [Moisture Noise] をブラーして、レベルで調整して作成しました。

このノイズ選定も色々試してみたのですが、[Moisture Noise] が一番それっぽい結果になったと思います。

火色の部分と抜けの部分は別々にベースカラーにブレンドするようにしました。

最初は [グラデーションマップ] と [Replace Color] で調整しようと思ったのですが、これだと細かな調整が効きづらく、火色が微妙に気に入らないな、という状況下でうまく調整できなかったためです。

やっぱり途中途中で試行錯誤することは多いですし、うまくいかなかった!別の方法を検討しよう!ということも大変多いです。

ただ、ツールが充実しているおかげでイテレーションがけっこう行えるというのが強みですね。

火色の部分はこんな感じの実装です。

sd089.jpg

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火色の部分にも少しノイズを載せています。

抜けの部分も火色を元にして [HSL] ノードで調整しています。

というわけで今回はここまで。

全部の解説には時間がかかりそうですが、微修正しながらだったりするので致し方なし。